日本電波工業株式会社

品質技術シリーズ(*1):発振回路設計時に異常発振を防止する為のポイント

(*1)製品機能が維持できなくなったり、製品不良となってセット全体の動作不良となってしまったりする具体事例(設計、工程、工法、取扱いなど)と共に、製品不良となる理由を解説するシリーズです。

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1.安定発振の為に
 受動部品である水晶振動子は、お客様回路との発振条件の最適化が必要です。発振回路の設計をする場合は、水晶振動子が発振回路とマッチングが取れていることを事前に確認していただくことが大切です。適切なマッチングでない場合、不発振や周波数ズレなどの症状があらわれますが、特に異常発振現象があった場合、市場等で予期せぬ不具合を招く恐れがあります。ここでは、過去のトラブル事例より、異常発振について、未然防止策を含め提案いたします。


2.異常発振とは
 水晶振動子が正規の発振モード以外で発振することを異常発振と呼んでいます。正規の発振モード以外としては、スプリアスとの結合による発振、オーバトーン発振などがあります。


3. スプリアスとの結合による異常発振
 ATカット水晶振動子は、厚みすべりモードを発振モードとして使用していますが、この他に数多くのスプリアスモード(屈曲振動、面すべり振動など)が存在します(図1)。

AT-CUT水晶振動子の振動モード

図1.AT-CUT水晶振動子の振動モード


 そしてこれらのスプリアスの高次周波数が主振動と結合することがあり、主振動の周波数温度特性に影響を及ぼします。スプリアスを含めた水晶振動子の等価回路を図2に示します。

水晶振動子の等価回路

図2.水晶振動子の等価回路


 スプリアスの中で主振動に結合する危険性が高いのは屈曲振動や面すべり振動で、水晶片寸法に依存し寸法を変えることで周波数が変化します。また、主振動と屈曲振動の温度特性が異なるため、温度を変化させたときにある温度で主振動との結合が生じ、発振周波数が急激に変化する現象(Activity dip)が生じ、異常発振となります(図3)。

Activity dipのドライブレベル依存

図3.Activity dipのドライブレベル(*2)依存


 その為、NDKでは水晶振動子の水晶片や電極寸法の最適化を行うことで、これらのスプリアスを抑制し、Activity dipを未然防止しております。しかしながら、発振回路を設計する際に水晶振動子の仕様を超えるドライブレベルがかかった場合、主振動とスプリアスの結合によるActivity dipが生じることがありますのでご注意ください。尚、ドライブレベルを測定する際は、水晶振動子に流れ込む水晶電流(i)を電流プローブで測定し、その水晶電流(i)と水晶振動子の等価回路定数(R1,C0)、負荷容量(CL)より算出できます(*3)。


(*2) ドライブレベル(DL): 水晶振動子が発振するのに必要な電力です
(*3) ドライブレベル(DL)の計算方法:
DL=RL × i2 RL=R1(1+C0/CL)2
(RL=負荷時等価抵抗、R1=等価直列抵抗、C0=並列容量、CL=負荷容量)
なお、水晶電流(i)の詳細な測定方法については別途ご相談ください

 発振回路設計時にドライブレベルを制御する際は、適正なRdを選択してください(図4)。
ただし、Rd値が大きすぎると、出力レベルが小さくなり、お客様の後段回路が駆動できない問題が発生することがあるのでご留意ください。

発振回路と水晶電流

図4.発振回路と水晶電流


4.水晶振動子オーバトーンモードでの異常発振
 ATカット水晶振動子は厚みすべりモードを使用していることを既に述べましたが、水晶片の厚みと発振周波数は次式で計算できます。
  F(MHz)=1.67 × n/t(mm) (n:オーバトーン次数、t:水晶片厚み)

例えば基本波が8MHzの場合、3次オーバトーンは24MHzとなります(図5)。

厚みすべり振動

図5.厚みすべり振動


図6に水晶発振器の等価回路を示します。

水晶発振器の等価回路

図6.水晶発振器の等価回路


 発振回路側は負性抵抗(-R)と負荷容量(CL)で示され、水晶振動子の等価抵抗以下では起動しません。基本波で発振するか、3次オーバトーンで発振するかは、ICの負性抵抗特性(-R)で決まりますが、発振回路の負性抵抗には周波数特性があるので検討しなければなりません。

負性抵抗の周波数特性

図7.負性抵抗の周波数特性


 例えば、基本波8MHzの水晶振動子を基本波のみ発振させる場合、図7のような関係が基本波の負性抵抗と3次オーバトーンの負性抵抗にはありますので、基本波の負性抵抗を十分確保し、かつ3次オーバトーンで発振しないようにする必要があります。8MHzのSMD水晶振動子で等価抵抗のTypical値が基本波で120Ω、3次オーバトーン800Ωの場合、基本波で発振し、この場合は3倍波での発振の心配はありません。

負性抵抗の周波数特性(Rdの影響)

図8.負性抵抗の周波数特性(Rdの影響)

 しかしながら、図8のように赤線で示す負性抵抗の周波数特性のように、24MHzで-2200Ωの負性抵抗があれば基本波、3次オーバトーンのいずれも発振が可能となります。通常は発振開始時の起動が早い基本波で発振しますが、温度環境などによって3次オーバトーンで発振することもあり、異常発振となることがあります。
 このように、広い周波数範囲で負性抵抗が大きなICを使用する場合、負性抵抗を適正に抑制しなければなりません。解決策としては、図4の発振回路でRdを付加し水晶振動子に流れ込む電流を制御し、負性抵抗を調整します。Rd2200Ωを付加した時の負性抵抗を図8青線で示しています。3次オーバトーンの等価抵抗800Ωに対し負性抵抗は-480Ωとなり、異常発振の発生が未然防止できていることがわかります。

5.異常発振を未然防止する為に
 異常発振について事例をあげて説明いたしましたが、発振回路設計時には、水晶振動子とICのマッチングを十分検討いただくことで不具合を未然防止することができます。具体的なICおよび水晶振動子についてのマッチング情報につきましては、NDKホームページを参照ください。また、試作段階で、NDK回路検討サービスを活用いただければ、適正な回路定数を提案いたしますのでご検討ください。



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