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水晶振動子

使用上の注意

 弊社の水晶振動子を正しくご使用頂き、十分な性能を発揮させるために、下記の注意事項を必ずお読み下さい。

1.電気的性能を満足させるために

1-1 水晶発振回路について
 水晶振動子は抵抗やコンデンサと同じ受動部品です。従って、短時間で起動し必要な精度を安定した発振出力として得るには十分考慮された発振回路である事が重要です。
 代表的な発振回路例は別項に掲載してありますのでご参照下さい。水晶振動子の発振周波数は負荷容量(CL)と水晶振動子固有の等価定数で決定されます。
 この値は回路固有の値となりますが、記載例の回路定数の値は、ICやトランジスタが変更されたり配線のパターンが異なると、同じ特性が得られなくなる事があります。
 図11の基本的な発振回路の場合の負荷容量は概略次の式でもとめられます。
 CL={C1 C2/(C1+C2)}+CS+CIC
 ここで、   CS:浮遊容量  CIC:ICの内部容量
  CL:負荷容量  C1,C2:外付け容量
例えば、CS=2pF, CIC=4pF, C1=C2=20pF の場合、この回路の負荷容量は CL=16pF となります。その場合には負荷容量、CL=16pF で中心周波数が合わせ込まれた水晶振動子を用いる事が必要です。

1-2 発振回路の発振能力とその検証
 発振開始時の水晶振動子と発振回路の等価的回路を図に示します。回路の負荷容量CLと負性抵抗-Rの直列回路で示しております。水晶振動子側は等価的に実効インダクタンスX=ωLeと実効抵抗Reの直列回路になります。
この場合、次の条件を同時に満足する事が発振させるための必要十分条件となります。
 (1) 位相条件:ωLe-1/(ωCL)=0
 (2) 振幅条件:Re≦|-R|(-Rは負の抵抗値)
(1)の位相条件は発振周波数を決定し負荷容量CLで決まる事は前述の通りです。
(2)の振幅条件は発振の立ち上がり及び発振持続条件として、安定な発振出力を得るために必要な条件です。
 発振立ち上がり時において回路の負性抵抗値-Rの絶対値が水晶の実効抵抗Reよりも十分に大きな値を確保する回路設計が必要になります。負性抵抗が大きいほど発振能力が高い(発振マージンがある)回路と言えます。
 (発振マージン)=|-R|-(Re)
必要な発振マージンの値はお客様の製品用途、ご使用される環境条件や周波数或いは水晶の形名・特性等により大きく左右されますが、その最低値として300Ω~3000Ω程度が一般的です。必要な発振マージンを確保できない場合には、発振回路として機能しなくなりますので、必ずご確認をお願い致します。


図11 水晶発振回路例

―簡易的な検証方法―
 希望される発振マージンに相当する固定抵抗器を水晶に直列に挿入し(図11の※印の位置)電源をON-OFFした場合に、その都度確実に発振が開始する事を確認して下さい。(この場合水晶振動子と直列に抵抗が接続されるため、発振周波数は変化します)。この時、発振開始しないとか、起動開始までに時間を要するとか、発振が不安定である場合は前述の振幅条件が十分に満たされていないためと推定されます。何らかの理由で回路構成が不適当と思われますので改善が必要です。確実に発振が開始されて、かつ安定している状態であれば挿入した抵抗値を除去した上でこ使用下さい。

1-3 水晶振動子の励振レベル

 水晶振動子の励振中における振動姿態は機械的な振動をしています。しかし、この振動の振幅をある程度制限しないと、特定の温度において周波数の連続性が失われたり、水晶振動子の実効抵抗が大きくなる場合がありますので、適当な励振レベルでお使い下さい。
 移動体通信用途等で周波数安定度が特に必要な場合には10~100μW程度での使用をお薦め致します。

1-4 周波数温度特性


図12 周波数温度特性の回路による影響

 水晶振動子単体で測定した周波数温度特性と、その水晶振動子を実装し発振器として測定した周波数温度特性とは異なります。発振回路として周波数温度特性の規格が狭くなると規格を満足しないことがあります。これは、水晶振動子だけでなく、発振回路も温度特性をもっているからです。このような場合は、使用される発振回路の温度特性をよくご調査の上、これを補正するような周波数温度特性の水晶振動子を発注して頂く必要があります。(図12参照)
 さらに厳しい規格が必要な場合には温度補償された水晶発振器のご使用をおすすめします。詳しくはお問合わせ下さる様お願い致します。



2.機能的性能を満足させるために

 水晶振動子は内部構造が特殊な上、性能を維持させるため、保持器内部を真空にするか、不活性ガスを封入した状態で密封されています。

2-1 超音波溶着機のご使用について
 超音波溶接機をご使用されると、超音波の周波数と水晶片が共振することにより特性劣化をまねく場合があります。
 ご使用される際は共振しない製品もございますので、弊社営業にご確認願います。

2-2 表面実装型水晶振動子の実装について
(1)基板実装後の急激な温度変化
 セラミックスを使用している表面実装型水晶振動子のパッケージで、実装基板の材質がセラミックスと異なる膨張係数を有する場合、過酷な温度変化を長期間くり返す環境下では、はんだ付けのフィレット部分に亀裂を生じる恐れがあります。
 そのような環境条件が想定される場合は、事前にご確認される事をお薦め致します。
(2)自動実装による衝撃
 自動実装による水晶振動子の吸着またはチャッキング、及び基板に搭載する際に規格を越える衝撃が加わりますと、特性の変化または劣化につながりますのでご注意下さい。
(3)基板曲げによるストレス
 プリント基板へ水晶振動子をはんだ付け後に、基板面を曲げますと機械的ストレスによりはんだ付け部が剥離したり水晶振動子のパッケージにクラックが入る事がありますのでご注意下さい。
(4)アース端子の処理
 水晶振動子にアース端子がある場合は必ず、GND又は電源端子にハンダ付けして使用して下さい。フローティング状態ですと正しい周波数にならない場合があります。

2-3 はんだ付け、超音波洗浄について
 水晶振動子のはんだ付け温度条件は、一般電子部品と同時作業が可能なように設計されていますが、製品の種類によっては条件が限定される場合があります。ご使用前に必ずご確認下さい。また、フラックスの超音波洗浄はさしつかえありませんが、超音波洗浄機の発振周波数と共振を起し、特性劣化をまねく場合もあります。ご使用前に実装基板にて異常が生じない事をご確認下さい。

2-4 腐食性材料の影響
 水晶振動子が塩分や腐食性材料に接触したり、塩素系又は硫化物ガス等の雰囲気に長時間さらされると、腐食によりパッケージの気密性を保てなくなる等致命欠点となる恐れがあります。水晶振動子周囲に用いる接着剤、ポッティング剤等の選定には、十分ご注意下さい。

2-5 リード型水晶振動子の実装について
(1)水晶振動子を基板上に実装する場合は、上部からの衝撃によって水晶振動子の保持器ガラス部の破損を防ぐ為、他の電子部品の高さ以下に実装して下さい。ガラス部が破損しますと気密性が損なわれ、性能劣化する事があります。
(2)リード型水晶振動子をプリント基板に密着させて実装される場合、プリント基板の孔の間隔は水晶振動子の端子間隔に合わせて下さい。
  僅かなピッチ誤差により水晶振動子保持器のガラス部にクラックが入る事があります。
(3)リード型水晶振動子をプリント基板に実装する場合は、機械的共振によりリード部分が疲労し切断する場合がありますので、プリント基板に密着させてはんだ付けされる事をお勧めします。(図13参照)
(4)プリント基板に水晶振動子を取付けた後、図14のように水晶振動子を動かすと、保持器ベースのガラス部にクラックが入り特性を劣化させる場合がありますのでご注意下さい。

図13 水晶振動子の実装方法 図14 水晶振動子取付後の注意



3.リフローソルダリングについて

表面実装対応の水晶振動子のリフロー温度プロファイルは下記を標準とします。

はんだ付条件例

* ピーク値温度:260±5℃ 10秒以内
* 本加熱:230℃以上 30±10秒
* 昇温速度:3℃/秒以下
* 降下速度:6℃/秒以下
* 予備加熱:150~180℃ 90±30秒

禁止事項

特性の劣化または、破壊を招く恐れがありますので下記を越える条件でのこ使用は、避ける様お願いします。

SMD水晶製品の耐熱性
【リフローはんだ耐熱性】
 ピーク温度:265℃ 10秒
 本加熱:230℃以上 40秒
 昇温速度:3℃/秒
 降下速度:6℃/秒
 予備加熱:150~180℃ 120秒
 リフロー通過回数:2回
【手はんだ耐熱性】
 使用条件:端子電極に400℃のはんだゴテを4秒間押し付ける。
 使用回数:2回
(1) ガラス封止品
 ガラス封止品のはんだゴテ使用時には、コテ先は封止部分よりも下側に当て、封止ガラス部分にコテ先を当てない事。
 (コテ先がガラスに接触するとガラスが溶けて気密を損なう恐れがあります。)
(2) 金錫封止品
 金錫封止品の半田ゴテ使用時には、封止部分にコテ先を当てない事。(コテ先が封止部に接触すると封止材が溶けて気密を損なう恐れがあります。)
 なお、本製品は可能な限りコテ、エアーヒーターは使用せず、リフローで実装することをお勧めします。
 手直しのため本製品を基板から取り外したり、モジュールから取り出したりする際、あるいはモジュールを基板から取り外す際、過度な加熱をすると封止材料である金錫が溶融し特性の劣化や気密が破壊される場合がありますので、特に上記の熱的な条件に準拠した取扱いをお願い申し上げます。やむをえずエアーヒーターを使用する場合は下記の条件を超えることの無い様お願い致します。
 エアーヒーター温度:280℃ 時間:10秒

SMD以外の水晶製品の耐熱性
【フローはんだ耐熱性】
 はんだ温度:265℃ 10秒
 フロー回数:2回
【手はんだ耐熱性】
 使用条件:端子電極に400℃のはんだゴテを4秒間押し付ける。
 使用回数:2回



4.保証項目

 水晶振動子の環境及び機械的特性に関しては、温度、湿度、耐衝撃性や耐熱性等を試験項目とします。製品ごとに各試験項目と条件を設定し、製品の特性を保証いたします。但し、水晶振動子の形状、特性、用途や環境等により、保証項目や条件は異なります。  

(*)一般民生用途品:AV・OAなど、最も一般的な機器に使用される製品

No. 試験項目 条件 規格
1 高温放置 +85±3℃にて720時間 *1
2 低温放置 -40±3℃にて500時間 *1
3 高温高湿 温度+60±3℃・湿度90~95%にて、500時間 *1
4 熱衝撃 -40±3℃/+85±3℃
各30分を1サイクルとして500サイクル
*1
5 振動 周波数:10~55Hz
全振幅または加速度:1.52mm
周期:1分
回数:直行3方向各2時間
*1
6 機械衝撃 衝撃:981m/s2 6ms 半波正弦波
回数:XYZ 6方向 各3回
*1
7 落下衝撃 75cmより硬質木板(30mm以上)上に自然落下3回 *1
8 はんだ付け性 予備加熱温度 +150±10℃ 予備加熱時間 60~120秒
SMD温度 +215℃に達してから30±1秒
ピーク温度 +240±5℃
はんだ種類:鉛フリーはんだ(Sn-3.0Ag-0.5Cu)
フラックス:ロジン系メタノール溶液(1対4)で実施する。
電極が90%以上
はんだで覆われていること
9 リフロー耐熱 予備加熱温度 +150~180℃  予備加熱時間 90±30秒
本加熱温度  +230℃以上  本加熱時間  30秒以内
ピーク値温度 +260±5℃   ピーク値時間 10秒以内
*1

(*1) ΔF/F≦±5×10-6、ΔCl≦±15% or 5Ω のいずれか大なる方
製品毎の詳細につきましては、お問い合わせください。



5.故障かなと思う前に御確認ください

水晶振動子をご使用いただくにあたり、不具合が発生した場合弊社では、大至急真因を特定し、お客様の御迷惑を最小限にするように努めています。
御返却いただく前に、お客様に次の点について御確認いただくよう、お願い申し上げます。

5-1. クロスチェックによる不具合の絞り込み(水晶振動子または発振回路部品)
NGが発生しているPCB(A)と、不具合が発生しないPCB(B)を御用意ください。
次に、PCBに実装された水晶振動子を取り外し、交換して実装し、良否判定ください。

(ケース1) 水晶振動子交換後、PCB(B)がNGとなり、PCB(A)がOK。
念のため再交換し、PCB(A)が再度NGなった場合⇒水晶振動子がNGの可能性高いまたは水晶振動子と発振回路のマッチングに問題の可能性が有ります。

(ケース2) 水晶振動子交換後、PCB(A)がNGなり、PCB(B)がOK。
念のため再交換し、PCB(A)が再度NGなった場合⇒水晶振動子以外の部品がNGの可能性高いと想定します。ICなどの部品をクロスチェックするなどをして、不具合部品を特定ください。

(ケース3) ケース1, ケース2以外の場合で、両PCBともOK, 両PCBともNG、または交換を繰り返した時再現性無い場合は、水晶振動子とPCB(発振回路)とのマッチングが悪いことも想定されます。

5-2. 不具合症状を御連絡ください。
ケース1, ケース3では水晶振動子自身または使用条件に問題がある可能性ありますので不具合症状をお知らせください。
① お客様PCBでの不具合症状(出力停止、画像不良、ノイズ等)をお知らせください。
② 低温、高温など特定温度で不具合が発生する場合は、不具合となる温度。
③ PCBが不具合症状となる水晶振動子の特性(周波数ズレ等)についてお気づきであればお知らせください。
④ 不具合発生状況(発生数、発生ロット)をお知らせください。不具合品の表示やラベルを撮影し送付ください。

5-3. 不具合品の送付
お客様でのクロスチェック結果及び不具合症状を添え、弊社営業窓口に御返却ください。
尚、既にお客様で水晶振動子特性の単体での測定実施済みでしたらその結果を教えてください。
御返却の際は、PCB実装状態で御返却いただければ、弊社にて、水晶振動子の問題か、マッチングの問題かを解析いたします。

5-4. 回路検討
弊社にて発振回路と水晶振動子のマッチングに問題がある場合、回路定数の変更などで発振周波数のズレや発振不安定などの不具合現象を改善する為の提案をさせていただきます。
尚、回路検討の為の接続方法(VCC, アース、出力等)を御教授いただくよう協力ください。

お客様で水晶振動子を標準部品とされている場合で、複数の異なるPCBに水晶振動子を御使用いただく場合、別々の回路検討が必要となりますので申し付けください。

尚発振回路についての概要はアプリケーションノートの〝発振回路〟をご参照ください。