技術コラム

2026.07.13

水晶振動子ができるまで:製造工程を10ステップでわかりやすく解説

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イントロダクション

自動車やスマートフォン、PCなど、私たちの身の回りにある電子機器には水晶振動子が数多く使用されています。

水晶振動子は、電子機器の正確な時間管理や信号制御を行うための基準となる部品です。そのため、非常に高い精度と品質が求められます。

しかし、水晶振動子がどのように作られているのかを知る機会はあまり多くありません。

本記事では、水晶振動子の製造工程を10ステップに分けて、わかりやすく解説します。


① 原石育成(人工水晶の生成)

水晶振動子の原材料となる人工水晶は、オートクレーブと呼ばれる高温・高圧の特殊な容器内で育成されます。

ラスカと呼ばれる天然水晶を高温高圧下で溶解させ、種結晶上に再結晶化させることで高純度な大型の人工水晶が作られます。

この工程は、水晶振動子の性能を左右する重要なステップです。


天然の水晶片(ラスカ)
天然の水晶片(ラスカ)

② 切断・角度測定

育成した人工水晶を、製品仕様に合わせて所定の角度と厚みに切断します。

水晶振動子は、切断する角度によって温度特性や周波数特性が変化するため、高い精度で加工する必要があります。

切断後は角度測定を行い、仕様ごとに分類します。例えば、一般的な水晶振動子に広く採用されているATカットの場合、Z軸から約35°15′だけ傾けた面に平行に切り出した水晶片を指します。

水晶片の主な切断方位
水晶片の主な切断方位

③ 研磨

水晶振動子の周波数は、水晶片の厚みによって決まります。

一般的に、水晶片が薄いほど高い周波数で振動します。

目的の周波数や特性を実現するため、研磨材の種類や粒度を選定しながら、ミクロン単位の精度で研磨を行います。


④ 外形加工

研磨した水晶片を、用途に応じた形状や寸法へ加工します。

水晶振動子に使用される水晶片の形状には、主に円形や四角形が用いられます。

また、振動特性の向上や不要振動の抑制を目的として、ベベル加工(面取り加工)を施す場合もあります。


⑤ エッチング・洗浄

切断や研磨工程で、水晶の表面に微細な加工ひずみが発生します。

これらは振動特性に悪影響を与えるため、化学エッチング※1によってひずみを除去します。

その後、洗浄工程で表面についた薬液などの残留物を取り除き、高品質な状態に仕上げます。

※1:化学エッチングとは、酸やアルカリなどの薬液を使用して、材料の不要な部分を溶かして除去する加工技術です。


⑥ 電極形成

水晶振動子が電気信号によって振動するためには、電極が必要です。

電極形成は、スパッタ装置※2もしくは真空蒸着装置※3によって行います。いずれかの装置で水晶片に電圧を印加できるよう金属電極を形成し、圧電効果によって安定した周波数で振動できるようにします。

※2:スパッタ装置とは、真空中で金属ターゲットにイオンを衝突させ、その際に飛び出した金属原子を水晶片の表面に堆積させる成膜装置です。

※3:真空蒸着装置とは、真空中で金属を加熱して蒸発させ、その蒸気を水晶片の表面に堆積させる成膜装置です。


スパッタ装置による電極形成
スパッタ装置による電極形成

⑦ 組立

電極を形成した水晶素板(ブランク)と、ベースの電極端子を接着します。

一般的には導電性接着剤を使用することで、ブランクの固定に加えて、電気的な接続の役割を果たしています。

この工程では、振動特性を損なわないようにする高い組立精度が求められます。


水晶振動子の構造
水晶振動子の構造

⑧ 周波数調整

製造工程で生じるわずかなバラツキを補正するため、周波数の調整を行います。

水晶の厚みや電極の形成状態によって、わずかな周波数の差が発生するため、調整は必須です。

具体的には、電極膜厚の調整などにより、製品仕様で定められた周波数範囲に収めます。


⑨ 封止

組み立てた水晶片を外部環境から保護するため、パッケージを封止します。

封止方法には、シーム溶接封止やガラス封止、金錫封止などがあり、製品に求められる気密性や信頼性、用途に応じて最適な方法が選択されます。

また、封止時にパッケージ内部を真空状態または不活性ガス雰囲気※4にすることで、電極などの酸化や湿気による劣化を防ぎ、長期信頼性を確保しています。

※4:不活性ガス雰囲気とは、酸素や水蒸気を排除し、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスで容器内の空間を満たした状態のことです。


⑩ 検査

最後の検査工程では、主に電気的性能検査を実施します。

検査において一定の基準を満たした製品が出荷され、自動車やスマートフォン、PCなど、私たちの身の回りにあるさまざまな製品の内部で活躍します。


水晶振動子の製造で重要なポイント

水晶振動子の製造では、以下の要素が特に重要です。

  • 高純度な人工水晶の育成
  • 高精度な切断角度管理
  • ミクロン単位の研磨技術
  • 高精度な周波数調整
  • 厳密な品質検査

これらの工程を経て、高い周波数安定性と信頼性を持つ水晶振動子が生み出されています。


まとめ:高精度な水晶振動子は精密な製造工程から生まれる

水晶振動子は、人工水晶の育成から始まり、切断・研磨・電極形成・組立・封止・検査まで、多くの精密な工程を経て製造されています。

電子機器の性能や信頼性を支えるためには、各工程における高い技術力と品質管理が欠かせません。

当社では、人工水晶の育成から完成品の製造までを一貫して行うワンストップ体制を構築し、高品質・高精度な水晶デバイスを提供しています。

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