人工水晶は、天然の水晶を原料とし、
不純物の少ない高純度な水晶に
再結晶化させたものです。
水晶デバイスや光学製品等の素材として使用されており、この素材自体が製品の特性に大きく影響を及ぼします。
原料・種水晶・育成・技術者や職人による匠の技など、最高級を求めるNDKのこだわりをご紹介します。
原料
原料への厳しいこだわり
天然水晶のかけら「ラスカ」
ブラジルの大規模な露天掘りの様子
人工水晶の原料となる天然水晶のかけら「ラスカ」には、透明度に応じて5等級程度に分類されます。2〜3等級が人工水晶の育成には適しています。透明度が悪いと、クラックや成長時の母液を含んでおり、鉄・ナトリウム・カルシウム・カリウム・塩素・フッ素など不要成分が多くなり、よくありません。また、透明度が高いと、今度はアルミニウムが極端に多くなります。これは、天然の良質な水晶がアルミを取り込んで成長するためです。
ラスカの等級
1等級(透明)
2等級(半透明)
3等級(白色不透明)
NDKでは、不純物の少ないものが産出されるブラジルやマダガスカル産の2~3等級のラスカを使用しています。出荷前に分析機関でラスカ中の不純物濃度分析を行います。分析の結果、濃度規格を満足している事を確認した後、ようやくブラジルから出荷されます。
種水晶
種水晶はNDKのDNA
専用の種水晶を自社生産
設置間隔は、技術者の経験とノウハウが頼り
育成
世界最大級のオートクレーブ
大型育成炉模式図(内径650mmφ×14m)
NDKの狭山事業所には、世界最大級のオートクレーブが設置されています。
深さ14メートルで総重量118トン、内径65センチ、肉厚29センチになります。
1日の成長速度は約0.5mm。
このオートクレーブで数カ月~半年をかけ育成させます。オートクレーブ1本から作られる人工水晶は、約2トン。全て同じ大きさで同じ品質を持っており、1つの人工水晶から数百万個の水晶部品を作ることができます。
1つの人工水晶から作られる水晶デバイスの数
約2,000,000個以上
一度にこれだけの量を作れるのは世界でもトップクラス
オートクレーブ内部の様子
人工水晶を育成する原理は、地殻内部で天然水晶が成長する過程に似た環境を人工的に再現するものです。オートクレーブにラスカと種水晶を入れ、上部の温度を下部の温度より低くすると高温高圧下で溶解した原料のラスカが自然対流によって上部に移動、種水晶の上に溶けた水晶が付着し、種水晶を土台にして再結晶化していきます。 この時のオートクレーブ内部圧力は、1,300気圧~1,400気圧です。
匠の技
見えない成長を見極める可視化の技
オートクレーブはいったん蓋を閉めたら、3~6カ月の育成期間中、中をみることはできません。NDKは長年のノウハウと匠の職人技により、内部が見えないなかで、育成具合を見極め、確実に要求通りの品質をつくりこみます。
結晶の成長は、原料を溶解した溶液の温度差によって生じます。ヒーターが劣化するとこの溶液の温度差が精密に制御できないため、NDKでは2017年 改修工事により
それを改善しました。また溶液の温度測定は、オートクレーブ表面の温度差から推定しますが、この方法だと充分とは言えません。そこで同年、結晶成長速度を予測する新しい方法を考案しました。
この方法により、オートクレーブ内部での結晶成長を間接的に可視化することができるようになりました。成長速度は、人工水晶の「赤外線吸収係数α」品質と周波数温度特性に影響を及ぼす重要な工程になります。
品質を左右する溶液の対流安定化
種水晶の他に品質を左右する要因の一つに、オートクレーブ内部の溶液の対流を安定にさせることがあります。NDKでは独自で開発を進めた構造の対流制御板(バッフル)を育成仕様ごとに使い分け、求められる人工水晶の品質によって溶液の対流を制御しています。
陰でNDKの人工水晶の品質を支える職人技
センサや制御だけで、優れた人工水晶を育成できるわけではありません。
オートクレーブごとに絶妙なクセがあるため、それを把握して温度や対流を調整するのは、職人の経験と技にかかっています。蓋の固定ひとつとっても、内部は1,500気圧にもなるため固定の精度が製品の品質を大きく左右します。1/100ミリ単位での精度で締めこんでいかなければならず、この作業は人間の微妙な操作が必要であり機械化できません。
できあがりに差がでてきてしまう、ミクロン単位のメンテナンス
オートクレーブは高温高圧で使用さえる、いわゆる「圧力釜」です。よって、メンテナンスの精度が悪いと、高圧力状態に耐えきれずにシート部分からリークを発生させ、充填された溶液が外に漏れだしてしまいます。溶液が漏れると内部圧力が低下するため育成は中止、最悪のケースはリークによってシート部分に切れ目が発生してしまいます。NDKでは、熟練の整備技術を習得した作業者のみがオートクレーブの整備を行っており、数年にわたってシート部分からのリークは発生してません。
人工水晶の品質評価
完成した人工水晶は、JISで定められた品質基準に従って自社で検査を行っています。
水中に原石を浸透させ光を当てて水晶内部を目視し、インクルージョンやエッチチャンネル等の検査をします。その他、α値(Q値)につていは指定の対象原石から測定サンプルを切り出し、測定器を使用して自社で測定します。(一部、不純物分析が必要な仕様(高純度等)の場合にみ、外部機関に依頼している場合もあります。)