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技術情報

次世代800G/1.6T光通信を支えるフォトリソグラフィ技術を採用した156.25/312.5MHz差動出力水晶発振器

2025年05月20日

(1)はじめに

 6Gへの移行により、移動体通信の速度は5G比較10倍の数100Gbps、同時接続数においても5Gの10倍となる数千万台/km2となる見込みです。これによりデータトラフィックはますます増加していきます。

 更に、4Gや5Gといったこれまでの世代の進化は携帯電話やスマートフォンが中心となり進化を遂げてきましたが、6Gへの移行に向け、現在AI分野が期待されるキラーアプリケーションとして注目され急成長しています。

 AI需要の後押しを背景に、データセンターにおけるトラフィックは急増し、インフラ機器が高速通信に高度化していく中、それらの通信を支える光トランシーバーの通信速度は800Gを超え1.6T/3.2Tへと移行するトレンドとなっています。

 弊社は、これらの高速通信の品質維持の為、フォトリソグラフィを採用した精密加工技術による基本波水晶設計で、高品質基準クロックを提供していきます。


(2)技術背景

 光伝送における強度変調直接検波(Intensity Modulation-Direct Detection:IM-DD)方式は、ボーレートの高速化と振幅レベルの多値変調により1シンボル当たりの帯域を増やして高速化を実現しています。400G/800G通信ではNRZからPAM4への移行により全振幅が同じ場合、信号振幅は1/3となり、ノイズに対する感度が増加しSN比はより厳しいものとなっています。

 また、デジタルコヒーレント(Digital Coherent)方式では、X偏波Y偏波ごとに位相/振幅に情報をのせ伝送し、SNRは重要な指標とされています。現在業界では400G以上の光トランシーバーに対して16QAMを採用し高速化しました。

 こうした高速データ処理において、小型・高温度動作・高周波・低位相ジッタのリファレンスクロック(水晶発振器)が必要とされています。


(3)光通信の市場動向

3.1 通信の高速化

 データ通信速度の高速化には、ボーレートの高速化、1シンボルあたりのビット数の増加、またはレーン数を増やして高速化する方式があり、これらを組み合わせて高速化を実現しています。


通信の高速化


3.2 シンボルの多値化

3.2.1 強度変調直接検波方式

 振幅(光強度)を多値にしてビット数を増加させる方式です。PAM4の場合、NRZと比較し全振幅が同じ場合、振幅は1/3となるため、ノイズ一定とした場合、SNRが低下します。


強度変調直接検波方式

※こちらの画像はイメージです。


3.2.2 デジタルコヒーレント方式

 X偏波Y偏波ごとに位相/振幅(光強度)に情報をのせ伝送する方式です。多値化に従いシンボル間隔は狭くなり、ノイズが一定であってもSNRは低下します。


デジタルコヒーレント方式


3.2.3 UI(ユニット・インターバル)に対する許容値

 サンプリングUIに対する許容値です。UIに対する許容範囲UIrms比率を一定とし、ボーレートを高速化した場合、UIrms実数値は相対的に小さくなります。 リファレンスクロックへのジッタ要求は厳しくなり、ボーレートが2倍の場合、ジッタは1/2要求となることを意味します。


ユニット・インターバル


3.2.4 Phase noise mask

 位相雑音の規格です。ボーレートが2倍の高周波に移行した場合、Phase noise mask規格は、20Log(N)で-6dBと厳しくなります。リファレンスクロックのPhase noise規格は厳しいものとなります。

Phase noise mask


(4)強度変調直接検波方式

 WDM方式の場合、波長分散による時間方向の広がりが波形を歪ませます。
 受信側は位相情報を読み取らないため信号強度の読み取りエラーとなります。 距離が長くなることと、ボーレートが早くなることによって波長分散の影響は受けやすくなります。 変復調には低ジッタのリファレンスクロックが必要です。
 伝送システム設計時には、送受信パワーバジェットの確保が重要とされています(WDM方式の場合は前記波長分散劣化も含む)。


<強度変調直接検波方式 ブロック図>

強度変調直接検波方式ブロック図


(5)デジタルコヒーレント方式

 デジタルコヒーレントはDSPで波長分散補償するため波長分散の影響を受けづらい変調方式です。
 光源の変調時に位相方向の雑音が受信の復調に影響します。 また、QPSK(2ビット)から16QAM(4ビット)とビット数が増えると、シンボル間隔はより狭くなり位相雑音が一定とするとSNRは低下します。 そのため、変復調には低ジッタのリファレンスクロックが必要です。
 長距離・多中継の伝送システムでは、アンプが追加され、アンプのノイズが累積されSNRは劣化します。
 伝送システム設計時には受信機のOSNR確保のためのノイズバジェット確保が重要とされています。


デジタルコヒーレント方式-1

デジタルコヒーレント方式-2


<デジタルコヒーレント方式 ブロック図>

デジタルコヒーレント方式ブロック図


(6)開発した製品

 当社は、フォトリソグラフィ技術を駆使した高温度対応の基本波・高周波水晶振動子の開発、その水晶振動子の周波数温度特性を補償する低位相ジッタを実現した小型IC及び小型パッケージの開発を進め、高温+105℃に対応する世界最高レベルの高周波、高精度、低ジッタを実現した 2.0×1.6mmサイズと 2.5×2.0mmサイズの差動出力発振器を開発しました。


6.1 位相ジッタ(位相ノイズ)

 位相ジッタの良し悪しは、位相ノイズの12kHz~20MHzのOffset Frequencyの値の積分値(面積)で表します。MEMS発振器とのPhase Noiseの特性比較を示しました。

位相ジッタ(位相ノイズ)-1


位相ジッタ(位相ノイズ)-2


 結果から読み取れるように、MEMS発振器は、水晶発振器の位相ジッタほど良好な特性は得られません。高速通信においては、位相ジッタ特性が重要であるため、水晶発振器を選定することが推奨されます。

 MEMS発振器の位相ジッタが悪い理由は、基本的にMEMS発振器はPLL回路で構成されているためです。PLL構成の発振器は、幅広い出力周波数を設定でき、リファレンスクロック自身の周波数の精度で、容易に高周波が得られる反面、位相ノイズ特性は悪くなります。
 基本的なPLLの基本構成は、VCO、プログラマブル分周器、位相比較器、ループフィルター(チャージポンプ)、LPF、リファレンスクロックで構成されます。PLL構成におけるVCO部は、位相雑音が非常に悪く、VCO位相雑音を抑圧するために、LPFのカットオフ周波数を高く設定します。
 カットオフ周波数より低域は、雑音を抑圧する効果はなく、リファレンスクロックの位相雑音はそのまま残り、且つ、PLLの逓倍数Nに比例して位相雑音はN倍に悪化してしまいます。 それに加えて、位相比較器など、PLLを構成する各回路のノイズが更に加わります。

位相ジッタ(位相ノイズ)-3


 一方で、当社の発振器は、PLL回路を使用せず、高周波を基本波発振で出力することで低ジッタを実現する最適な回路構成としています。 しかし、そのためには、振動子自体の周波数を希望する出力周波数で設計する技術的な難易度があります。 100MHzを超える周波数の振動子を基本波で製造するには、フォトリソグラフィの技術が欠かせません。 更に、高純度の水晶原石はQ値が高く雑音を抑圧します。 当社は原石育成の長い実績と製造ノウハウがあり、Q値の高いHigh-Qの原石育成技術を保有しています。 これらの技術により、100MHzを超える高周波で、かつ優れた低ジッタ特性の周波数提供を可能としています。


位相ジッタ(位相ノイズ)-4


6.2 消費電力

 MEMS発振器と比較し、およそ30%消費電力を抑えられます。

消費電力


 消費電力の観点においても水晶発振器が推奨される理由のひとつです。 MEMS発振器は、PLLを構成する回路に多くの電力を消費しています。 膨大なデータ処理に多くの電力を消費するデータセンター市場では、消費電力の抑制に大きな課題があります。 少しでも電力を抑えたいトレンドにおいて、低消費部材の採用は選定基準のひとつにあり、水晶発振器が好まれる理由となっています。

6.3 モジュールサイズ

 世界最小クラスの2.0mm×1.6mmサイズを開発しました。 これにより、差動出力発振器の標準サイズのラインアップを増やし、小型化ニーズに答えます。 光伝送モジュールは、高速化が進むとともに小型サイズへと移行するトレンドです。 モジュールサイズの制約があるまま、部品点数は増加し、実装基板の面積は十分に確保できません。 小型サイズの表面実装部品の選定は基板レイアウト設計に大きく寄与します。

モジュールサイズ


(7)最後に

 当社は小型・高周波・低ノイズを実現した水晶デバイスを通じて、光伝送インフラの高度化に貢献します。


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