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発振回路評価方法

水晶製品高温高湿放置試験における結露防止のポイント

(*1)製品性能が維持できなくなったり、製品不良となってセット全体の動作不良となってしまったりする具体事例(設計、工程、工法、取扱いなど)と共に、製品不良となる理由を解説するシリーズです。

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水晶製品の高温高湿放置試験のポイントについて以下に説明いたします。

1.はじめに-高温高湿放置試験-
 水晶製品は長時間、高温高湿の環境条件下で試験されますが、高温高湿試験槽の運転条件や、途中結果を計測する為に製品の取り出し方が不適切であると相対湿度が高い状態で取り出されることになり、水晶製品が周囲より冷たくなるので、製品の表面に結露が発生します。水晶製品が結露した状態で晒されると、思わぬ不具合が発生することがあります。


2.結露起因の高温高湿放置試験でのトラブル事例
<ガラス封止タイプ水晶振動子の変色不良>
 高温高湿放置試験で、ガラス封止部分に結露したまま試験を継続すると、ガラス封止部分が白濁し、白濁したガラス成分が水分に溶け、PCB上に流れ出る不具合が発生することがあります。(図1)


図1.高温高湿放置試験でのガラス封止水晶振動子の変色

図1.高温高湿放置試験でのガラス封止水晶振動子の変色


 この変色は、水晶振動子の封止に用いている低融点ガラスに含まれる酸化鉛(PbO)が水分と反応し、水酸化鉛Pb(OH)2となり白濁した為です。この反応が進むと、封止ガラスが溶けリークし、不発振となることがあります。


PbO+H2O⇒Pb2+ +2OH- ⇒Pb(OH)2

<シーム封止タイプ水晶振動子の電極断線による不発振>
 高温高湿放置試験で、ベースの外部端子(側面)部分が結露したまま試験を継続すると、局部電池作用により電極断線し不発振となることがあります。水晶振動子内部と外部端子間は、W(タングステン)とNiの引き回し内部電極を介して結線されています。外部端子はAuメッキされており、結露の影響は受けませんが、引き回し内部電極はNiとW電極で構成されており結露すると、引き回し電極を供給源に、NiやWなど水に溶ける金属イオンが溶出します。この現象を局部電池作用と称しています。反応が進むと、引き回し内部電極が断線し、不発振や周波数ズレとなります。(図2、図3)

図2.高温高湿試験での結露による断線

図2.高温高湿試験での結露による断線


図3.Wが溶けるメカニズム

図3.Wが溶けるメカニズム


3.結露防止のポイント
(1)高温高湿放置槽より中間測定などで、試料を取り出す際、高温高湿のまま扉を開けると、槽内の温度が下がり、槽内の別試料の表面に結露することがあります。
(2)高温高湿放置試験を開始する際は、加湿する前に温度上昇させ、所定温度到達後、5分程度の加湿遅延することで、結露を未然防止できます。
(3)高温高湿放置試験の中間測定などを実施する際は、まず加湿を停止してください。その後、自然除冷し、常温となってから、扉を開け試料を取り出すことで、槽内試料の結露を防止できます。


図4は高温高湿試験の際、結露防止する為のポイントを図示したものです。


図4.高温高湿試験時の結露対策運転

図4.高温高湿試験時の結露対策運転


 尚、結露する温度/湿度および飽和蒸気圧については、JISZ-8806『湿度測定方法の飽和水蒸気圧』を参照ください。また、高温高湿放置試験方法に関する説明の詳細は、JIS60068-3-4,JISC60068-2-78を参照ください。

4. まとめ
水晶振動子を事例に、結露により、不具合が発生する事例説明をいたしましたが、結露を未然防止する為には、高温高湿試験中に高温高湿槽の扉を開けることが無いように取組みいただくとともに、高温高湿槽メーカーまたは貴社メンテナンス部門に相談いただき、装置起動時および停止時の温湿度を図4に示すプロファイルとなるように事前に温湿度制御プログラミングをご準備いただくようお願いいたします。



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