技術情報

オーディオと水晶の関係

オーディオと水晶の関係 ~音の品質とクロックの位相雑音~

アナログ→ハイレゾ

 音とは本来アナログ信号です。アナログ信号を処理する際には、「減衰、雑音、劣化」という欠点がつきまといます。その欠点を解決するのがデジタル化です。原音であるアナログ信号は、アナログ/デジタル変換器(ADC)によってデジタル化し、デジタル音源としてCDやネットワークを経由し配布されます。このデジタル音源はユーザーのデジタルオーディオ機器のデジタル/アナログ変換器(DAC)により処理され、最終的にアナログ出力されます。

 アナログ信号をデジタル化するためには、一定の周波数でサンプリング(*1)という作業を行います。音をできるかぎり原音に忠実に再現するためには、サンプリング周波数(*2)やビットレート(*3)をあげることが必要です。現在のハイレゾ音源はCD音源に比べ、サンプリング周波数/ビットレートともに向上し、より原音に近い音でデジタル化が可能となりました。

(*1) サンプリング:

アナログ信号を一定の間隔でデジタル信号に変換する作業。

(*2) サンプリング周波数:

アナログ信号からデジタル信号に1秒間に何回変換するかを表す値。

(*3) ビットレート:

1秒あたりで、どのくらいの情報量とするかを表す値。

[デジタル音源のサンプリング周波数とビットレート]

デジタル音源 サンプリング周波数 ビットレート
CD音源 44.1kHz 16bit
ハイレゾ音源 96kHz 24bit
192kHz 24bit
384kHz 24bit

音の劣化の要因となる雑音成分とジッタ

 ハイレゾ音源を正確に再現するためには、デジタルオーディオ機器内で音源の劣化を抑え、正確にデジタルからアナログに変換(DAC)し出力する必要があります。このDACの変換精度は、オーディオ機器のクロック周波数の雑音特性(必要な周波数以外の余分な周波数成分)に依存しています。

 クロック周波数は回路に雑音がまったく無ければ、スペクトラムが一本の線(右図①)になりますが、実際には右図②のように雑音によって変調され、スペクトラムは近傍に余分な周波数成分を持った特性になってしまいます。この余分な周波数成分を「位相雑音」といいます。

このクロック周波数の位相雑音がDACの変換精度に影響を与えることで、時間間隔が不規則となります。
これを「ジッタ」といいます。(下図参照)

正確で雑音の少ないクロック源の要求

 デジタルオーディオではクロック周波数の位相雑音が、ジッタとしてDAC機能に影響し音源の劣化の一因となり、忠実な音の再現を妨げています。したがって、音の再現性を高めるには位相雑音特性に優れた(ジッタの小さい)、マスタークロック用水晶発振器が必要となります。

 位相雑音は、水晶発振器本来の周波数を基準として、そこから離れたところで測定される周波数成分のレベルで表されます。基準となる周波数からの距離を離調周波数(Offset Frequency)といい、主に1Hz~1MHzの範囲で測定されます。

 また、水晶発振器は一般に周波数安定度が重要視されますが、周波数安定度は、長期間に渡り周波数が変動しない尺度を意味します。オーディオ機器においては、長期間における安定度よりも、短期間における変動が少ないことが求められます。その為、周波数安定度±30ppm~±100ppm程度の特性を持ったSPXO(*4)がマスタークロックとして多く使われています。また、ハイエンドのデジタルオーディオにおいては、さらに高品質な音を求め、OCXO(*5)などが使用される場合があります。

(*4) SPXO:

Simple Packaged Crystal Oscillator。温度補償や温度制御を行なっていない基本的な構成の水晶発振器。
当社では、SPXOのうち小型でクロック用途に使われる製品を「クロック用水晶発振器」に分類し、ご紹介しています。

(*5) OCXO:

Oven Controlled Crystal Oscillator。恒温槽によって発振器内部の水晶振動子の周囲温度を一定に保つことで、高精度を実現した水晶発振器。

デジタル・オーディオのマスタークロック用低位相雑音水晶発振器

 2015年オーディオ用水晶発振器では世界最高(2015年6月当社調べ)の超低位相雑音特性を有するOCXO【DuCULoN®】(*6)(デュカロン®)を開発いたしました。

 位相雑音特性例をご紹介いたします。

位相雑音特性例

(*6) DuCULoN®

Dual Crystal Ultra Low Noise OCXOの頭文字を使用した造語。

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