公開日:2025年06月12日

ファイバーレーザー時代の到来
広がる、水晶波長板のフィールド

産業界の変化とレーザー技術の転換

近年、産業界では省エネルギー化と効率化が強く求められています。これは、エネルギーコストの削減や環境負荷の低減、そして生産性の向上が重視されているためです。そうした中で、従来広く用いられてきたCO₂レーザー(波長10,600nm)に代わり、より高効率・高精度で、システムの小型化や保守性にも優れるファイバーレーザー(波長1,064nm)への移行が加速しています。ファイバーレーザーは、高いビーム品質、電気−光変換効率の高さ、冷却負荷の軽さといった特長により、加工性能の向上はもちろん、運用コストの削減や省エネルギー化にも貢献。その結果、生産性と環境対応の両立を目指す製造現場で、採用が広がっています。

拡大するファイバーレーザー市場

ファイバーレーザー市場は今後も拡大が見込まれており、2025年には約45億ドル、2030年には80億ドルを超えるとの予測もあります。
高効率・高出力・安定性・システムの小型化といった特長から、さまざまな産業で導入が進んでいます。


【主な用途】

opticalnews2_figure1.jpg

1,064nmで活きる、水晶波長板の性能

ファイバーレーザーの波長(1,064nm)は水晶を良好に透過するため、水晶波長板の有用性が発揮されます。 この波長は、ファイバーレーザーだけでなく、Nd:YAGレーザー(個体レーザー)の基本波としても広く使用されており、これらの用途でも水晶波長板は以前から偏光制御用に活用されてきました。ただし、CO₂レーザーの波長(10,600nm)は水晶に吸収されやすいため、水晶波長板は使用できませんでした。ファイバーレーザーの普及により、こうした産業用加工領域でも水晶波長板が新たに適用可能となりました。特に、レーザー加工では偏光状態を適切に制御することが加工の安定性や品質に大きく影響します。水晶波長板はこの偏光制御において、高い性能を発揮します。

水晶波長板の3つの特長

■高い透過率
水晶は1,064nmの波長に対して非常に高い透過率を持ち、レーザーエネルギーの損失を抑えます。

■優れた耐熱性
水晶は高温に強く、熱による変形や特性劣化が少ないため、長時間照射にも安定した性能を維持できます。

■高い耐久性
水晶は硬度が高く摩擦にも強いため、長寿命・低メンテナンスでの運用が可能です。

NDKが実現する高品質水晶波長板

    NDKでは、ファイバーレーザーに最適な水晶波長板を材料から加工・設計・品質管理まで一貫した技術で提供しています。

    opticalnews2_figure2.jpg

    ■超高純度の水晶「N-Grade EX」の採用
    高耐性・高透過率を両立したNDK最高グレードの水晶「N-Grade EX」を採用。
    1,064nmレーザーの長時間照射でも、透過率の低下が少なく、安定した性能を維持します。

    ■高耐久コーティング
    レーザー損傷を考慮した高耐久コーティングにより、長期間の使用でも高い性能を維持します。

    レーザー用波長板ARコート例(1,064nm)
     [ レーザー損傷閾値: 99J/cm2 ]

    opticalnews2_figure3.jpg

    ■直接接合技術(オプティカルコンタクト)
    接着型を使用せず、材料同士を光学的に密着させる接合技術を採用。
    高出力レーザーや短波長光への対応にも適しており、高精度かつ高耐久な波長板を実現しています。

    optics_wp-highpower_img11.png

    ファイバーレーザーの普及により、水晶波長板は新たな波長領域でもその性能を発揮する機会を得ました。NDKでは、長年培ってきた水晶加工・光学設計技術を活かし、高信頼・高性能な水晶波長板を提供しています。これからの高効率・高精度なレーザー加工に向けて、NDKの波長板が新しいレーザー波長領域における選択肢のひとつになることを目指しています。

    ※NDKの高純度水晶は、1,064nmの基本波だけでなく、Nd:YAGレーザーの2倍波(532nm)、4倍波(266nm)、5倍波(213nm)といった短波長域にも対応可能です。これらの領域では光子エネルギーが高くなるため、光学部品のレーザー損傷が課題になりますが、NDKはこれに対応した製品展開を行っています。

    arrow_upward