製品概要

車載用水晶振動子について

車載用水晶振動子の取り組み

1.はじめに
 水晶振動子は、その高いQ値によって高精度・高安定に周波数を制御し、かつ選択するユニークな電子部品の一つです。そして単に「周波数標準」としてだけでなく、「時間」や「時刻」の基準としても広く利用されています。
 水晶振動子が使用される用途には、時計をはじめスマートフォン・TV・オーディオなどの家電製品や自動車など様々なところで使用されています。近年、自動車の電装化が進み、多くの水晶振動子が使用されています。車載用水晶振動子は、一般の水晶振動子と比べ、高品質・高信頼性が求められます。高品質・高信頼性を満足させるためには、高度な設計技術だけでなく、車載用として生産ラインの構築やオペレーションに従事する作業者に至るまで、ものづくりにおける高度な技術力・高い意識レベルが必要になります。
 今回、車載用水晶振動子において、業界シェア50%以上を堅持する日本電波工業(株)(以下、NDK)の車載用水晶振動子の取り組みについてご紹介します。

2.車載用水晶振動子の取り組み(1)-車載用規格への適合
 電子部品における車載用製品(品質)と聞くと、品質マネジメントシステムIATF16949(旧ISO/TS16949)や車載電子部品評議:Automotive Electronics Council(AEC)により定められている車載要求規格AEC-Q200(受動部品:水晶振動子はこのカテゴリになる。)などを思い浮かべる方が多いと思います。
 NDKの車載用水晶振動子は、主に以下の3つの観点において、車載用規格を満たしています。

①製品設計
 AEC-Q200を満足する製品設計を行っています。設計段階から高品質・高信頼性を担保するため、設計審査会にてDRBFM(Design Review Based on Failure Mode)などを用いて検証した結果について、有識者により再検証・妥当性の確認を行っています。
 また、自動車の運転環境(極寒極暑)の考慮だけでなく、エンジン付近などさらに高温環境を想定し-40℃~+150℃まで対応した設計を行っています。NDKでは、この温度範囲外であっても検討して参りますので、ご相談いただければと思います。

②製品評価
 製品の品質・信頼性評価において、各設計開発段階における設計検証のため、量産ラインだけでなく、生産設備能力や測定器の確かさの検証を行っています。量産開始後も製品の品質・信頼性を定期的に評価・検証を行っています。
 NDKは、品質・信頼性を評価・検証する専門機関として、ISO/IEC 17025(*1)認証を取得した品質保証試験所を社内に設置し、製品の品質・信頼性を常に客観的に評価・検証を行っています。
(*1): ISO/IEC17025は、試験所が正確な測定/校正結果を生み出す能力があるか認定する国際規格です。

③生産工場
 NDKは、車載用製品を生産する国内外すべての工場でIATF16949認証だけでなく、ISO14001認証も取得しています。

     古川NDK   ISO9001:2015・ISO14001:2015・IATF16949:2016
     函館NDK   ISO9001:2015・ISO14001:2015・IATF16949:2016
     蘇州NDK   ISO9001:2015・ISO14001:2015・IATF16949:2016
     ANC/NQM(MALAYSIA)   ISO9001:2015・ISO14001:2015・IATF16949:2016

3.車載用水晶振動子の取り組み(2)-NDK独自の具体的事例
 今回、製品性能だけでは計り知れない高品質・高信頼性な車載用水晶振動子をご提供するため、NDKでは、どのような取り組みを行っているのかご紹介します。

①製造ライン
 車載向け製品の製造ラインは、一般品と区分けされた専用ラインです。一般ラインと識別する為、プレートやラベルにより車載ラインであることを明示しています。

車載専用ラインの識別プレート/ラベル写真(例)

②作業者
 車載向け製品作業者は、車載教育を行い、そのテストに合格したものを車載向け製品作業者として認定しています。この仕組みは生産工場別ではなく、NDKグループ全社共通システムとして導入し高い品質意識・力量の高い作業者のみよって、車載用水晶振動子を製造しています。

作業者の認定フロー

③検査
 車載用水晶振動子の検査は、一般品の検査とは異なり、お客様のご要求規格を満足するだけの検査ではなく、製品の重要な特性を製品設計の実力値で検査することにより、製品性能・品質にばらつきが少なく、高品質・高信頼性が維持できるよう管理しています。

 このようにNDKの車載用水晶振動子は、一般用水晶振動子と外観は同じであっても、製品設計段階から車載用製品として設計され、車載品質マネジメントシステムに適合した量産工場で製品製造を行っています。また、生産設備・生産ラインから作業者に至るまで、すべて車載専用で管理されたプロセスで製造しています。量産開始後も品質保証試験所にて定期的に製品の品質・信頼性評価を行い、高品質の維持・向上に努め、車載用水晶振動子のリーディングカンパニーとして、お客様に安心してご使用いただける製品をご提供しています。

内部構造の利点について

はじめに
 水晶振動子は、その高いQ値によって高精度・高安定に周波数を制御し、かつ選択するユニークな電子部品の一つです。そして単に「周波数標準」としてだけでなく、「時間」や「時刻」の基準としても広く利用されています。
 水晶振動子が使用される用途には、時計をはじめスマートフォン・TV・オーディオなどの家電製品や自動車など様々なところで使用されています。近年自動車の電装化が進み、車載用水晶振動子のニーズは高く、その用途にあわせた高信頼性・ロバスト性を向上させた高度な設計技術が必要になってきています。
 今回、車載用水晶振動子において、業界シェア50%以上を堅持する日本電波工業が提案する車載用SMD水晶振動子シリーズの内部構造の利点について解説します。

1. 水晶振動子の構造
 水晶振動子パッケージは、中空構造になっており、外部端子と内部端子はセラミックベースに配線され接続されています。水晶振動子パッケージ内に搭載される水晶片は、人工水晶*1を切断・研磨・外形加工を行い、個片化した水晶片の表裏に金属薄膜電極を形成しています。水晶片の表裏に形成した電極を電気的に接続し機械的に保持するため、導電性接着剤を用いて、この水晶片を2点でセラミックベースへ保持接続します。この水晶片を保持したセラミックベースとカバーを用いて気密封止したものが水晶振動子です。水晶振動子は、セラミックベースの外部端子を発振回路に接続することで、内部で接続されている水晶片が機械的な共振点で振動しこれを電気的信号に変換することで、固有の周波数を得ることができます。
 当社車載用水晶振動子 NX3225GA(外形3.2×2.5㎜)の内部構造を紹介します。

NX3225GA 内部構造

2.水晶片保持構造
 車載用水晶振動子であっても上記で述べた通り、水晶片を2点で保持する構造もあります。
水晶片を2点で保持する構造であっても車載用途で要求のある信頼性:AEC-Q200 *2など十分満足する構造です。  しかし、車載用途では、高信頼性・ロバスト性向上のニーズは高まっており、内部構造を工夫したのが、水晶片を4点で保持する構造です。
 当社車載用水晶振動子:NX3225GB(外形3.2㎜×2.5㎜)の内部構造を紹介します。

NX3225GB 内部構造

3.水晶片4点保持構造の利点
 日本電波工業では、最新のシミュレーション技術を活用し構造設計しています。今回、落下衝撃と構造共振点のシミュレーションを実施しました。

① 耐落下衝撃性能の向上
 落下衝撃時の水晶片保持部加わる応力シミュレーション結果を以下に示します。
*シミュレーション条件:水晶振動子に衝撃を加えたときの接着部(水晶片と導電性接着剤)に
            かかる応力

水晶片4点保持構造の利点

 水晶片2点保持構造で、保持部に加わる応力を1とすると、水晶片4点保持構造では、その1/5の応力になります。これは、水晶片4点保持構造にすることにより応力が分散するためです。
 この水晶片4点保持構造にすることにより、耐落下衝撃性能が向上し、3m 200回コンクリート上に落下衝撃を加えても発振し続ける水晶振動子をご提供しています。
 このように水晶片保持に加わる応力を分散させた高信頼性・ロバスト性の向上した水晶片4点保持構造製品を日本電波工業ではラインナップし、お客様のニーズにお応えしています。

② 超音波溶着機と水晶振動子の共振現象を回避
 一般的に超音波溶着で基板組み付けなど行う場合、超音波溶着機の周波数は、約10kHz~40kHzで行われています。
 水晶振動子 3225サイズ(外形3.2㎜×2.5㎜)の構造共振点シミュレーション結果を示します。

構造共振点シミュレーション

水晶片保持構造

 水晶片2点保持構造では、約20kHzに構造共振点があることがわかります。一方、水晶片4点保持構造では、約90kHzに構造共振点があることがわかります。
 お客様で超音波溶着機をご使用する場合、超音波溶着機の周波数と水晶片2点保持構造の水晶振動子では共振点が重なり、共振現象により水晶振動子が内部破壊されることもあります。これを回避するため、お客様のご使用環境にあわせ設計した水晶片4点保持構造製品を日本電波工業ではラインナップし、お客様のニーズにお応えしています。
車載用水晶振動子 3225シリーズ NX3225GBNX3225GDNX3225SA・NX3225SC
         2016シリーズ NX2016GCNX2016SAお問合せください


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