DNAへの転写因子結合

DNAへの転写因子結合

センサ上に二本鎖DNA(NF-κB標的配列)を固定化し、転写因子(p50)の反応及び抗体による信号増幅(増感)を行いました。

1.プロトコル

以下の条件で計測を行いました。

  • NAPiCOS Auto (マイクロ流路)
  • センサ:30MHz ツインセンサ
  • 流速:2μL/min
  • サンプル量:50μL
  • 送液バッファー:10mM Tris(pH7.6), 50mM NaCl, 1mM MgCl2, 0.5mM DTT
  • 転写因子:NF-κB(p50ホモニ量体)5μg/mL
  • DNA:ビオチン化オリゴDNA(25mer) biotin-5'-CACAGTTGAGGGGACTTTCCCAGGC-3'
    相補DNA(25mer)10μg/mL 3'-GTGTCAACTCCCCTGAAAGGGTCCG-5'

* 赤字はNF-κB標的配列

上記2つの合成DNAを混合して50μg/mLとし、二本鎖を形成させておきます。

図1:模式図

反応電極側にアビジンを固定し、リファレンス電極側をブロッキングします。

ビオチン化二本鎖DNAを流し、反応電極側に固定した後、p50の結合反応を見ます。

その後、抗p50抗体を流し、反応の増幅を見ます。

2.反応波形

2-1. ビオチン化二本鎖DNAを流し、アビジン固定電極に固定しました。

図2:ビオチン化二本鎖DNA固定波形

2-2. 引き続きp50を添加した後、抗体を流して増感しました。

図3:p50及び抗p50抗体結合波形

2-3. 特異性評価のため、ランダム配列のビオチン化二本鎖DNAをアビジン電極に固定し、その後にp50を流しました。

図4:ランダムDNA固定、p50添加波形

3.反応量

2項の波形から、差分反応量を取得しました。
p50はNF-κB標的配列特異的に結合していることが分かります。

表1:DNAとp50の反応量

*ランダム二本鎖DNAは20merであり、分子量がNF-κB二本鎖DNAの約80%です。このため反応量も約80%となります。

4.用語解説

転写因子 DNAに結合するタンパク質の総称で、DNAの遺伝情報をRNA(リボ核酸)に転写する機能を持ちます。
NF-κB (Nuclear Factor Kappa B) NF-κBはp50(分子量約50,000のタンパク質)とp65(分子量約65,000のタンパク質)で構成されている転写因子です。活性化されると標的DNA配列に結合します。p50はp65とのヘテロ二量体のみではなく、p50-p50のホモ二量体も形成します。NF-κBは細胞死を抑制したり、、炎症を促進する機能を持つことから、癌の進行を促進するとされています。
DTT (Dithiothreitol) 低分子の還元剤です。タンパク質のSH基を保護し、安定化します。
ホモ二量体 同一物質2つの複合体です。異なる2つの複合体はヘテロ二量体と呼びます。
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