抗体医薬品向け濃度定量センサ

抗体医薬品向け濃度定量センサ

プロテインAは抗体結合性を持つタンパク質です。今回その性質を利用し、抗体医薬品の濃度定量センサを開発しました。
プロテインAを固定化したセンサに抗CRP抗体を反応させ、繰り返し計測を実施。この結果、広範囲の濃度で計測が可能であること、また繰り返し計測によるばらつきの程度が良好であることが示されました。1枚のプロテインAセンサで、信頼性の高い複数のデータの取得が可能となります。
本センサの開発は株式会社 免疫生物研究所の協力を頂いております。

1.プロトコル

  • センサ:30MHz ツインセンサ(プロテインA固定化済)
  • 流速:20μL/min
  • サンプル量:100μL
  • 送液バッファー:PBS
  • サンプル:抗CRP抗体(Rabbit IgG)
  • 再生液:10mM グリシン塩酸

図1:模式図

2.反応波形

抗CRP抗体をインジェクションした後、引き続き再生液を添加しました。
これを3回繰り返した波形です。再生後は、元のベースラインに戻っています。
また抗体反応量も毎回ほぼ一定となっています。
リファレンス電極に変動がないため、反応電極の波形は差分波形と重なっています。

図2:計測波形

3.濃度依存性

抗CRP抗体の濃度を500ng/mL, 1μg/mL, 5μg/mL, 10μg/mLとして計測し、検量線を作成しました。
500ng?10μg/mLの範囲で定量的な計測が可能であることが示されています。

図3:プロテインAセンサを使用した抗体の検量曲線

4.センサ内ばらつきの検証

1枚のプロテインAセンサで、1μg/mLの抗CRP抗体を8回連続計測しました。
この結果、ばらつきの指標であるCV値が5%と良好でした。
繰り返し計測が十分に可能であることを示しています。

結果:平均115.3Hz σ=±5.9Hz CV=5%

図4:抗体1μg/mLの連続計測におけるセンサ内ばらつきの検証

5.用語解説

プロテインA 黄色ブドウ球菌の細胞壁タンパクの1つです。抗体と特異的に結合する性質を持つことから、抗体の精製などに汎用されています。
CV値 coefficient of variationの略で、変動係数のことです。標準偏差を平均値で割った値です。ばらつきの尺度を表します。
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