ビールのコク定量評価

ビールのコク定量評価

ビールのコクはおいしさの重要な要素であり、苦味や渋味、甘味など多くの「味成分」が関与します。微量な質量変化を計測できるNAPiCOSシステムを用い、脂質膜に吸着する味成分の量を計測することで、高精度にビールのコクを評価できるようになりました。この開発はサッポロビール株式会社様と共同で実施し、2013年日本味と匂学会で合同発表しました。

1.計測原理

ビールを飲むと、舌の粘膜上の細胞に味成分が吸着します。この量が多いほど、人間はコクがあると感じます。
そこで人間の舌の細胞表面を模倣した脂質膜をQCMツインセンサー上に形成し、コクセンサーとしました。

図1:人間がコクを感じる原理

図2:QCMツインセンサ上への脂質膜形成模式図

2.プロトコル

  • センサ:30MHz ツインセンサー(脂質膜形成済みコクセンサー)
  • 流速:150μL/min
  • サンプル量:100μL
  • 送液:純水
  • サンプル:ビール(純水6倍希釈)

3.反応波形例

コクセンサーにビールを流すと、脂質膜上に味成分が吸着します。

質量付加効果により、味成分の吸着量に応じて周波数が低下します。

この周波数低下量=コク量とし、ビールサンプルごとに値を取得します。

図3:ビール添加による周波数低下例

4.ビールのコク計測結果と官能試験との相関

8種類のビールのコク量を計測し、サッポロビール株式会社様の官能評価結果と併せました。

相関値 r=0.86 と高い相関が得られました。

図4:ビール8種の相関性評価結果

5.その他の飲料・食品への適用

緑茶とブラックコーヒーの計測例を下記に示します。

銘柄ごとにコク成分量が異なることが確認されました。

今後は他の飲料・食品のコク計測に適用した測定条件を開発していきます。

図5:緑茶 コク計測例

図6:ブラックコーヒー コク計測例

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