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2019.06.19
製品情報

技術情報追加「高周波メカニカル3Dリニアプローブの概要について」

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1.超音波センサとは
 超音波センサとは、超音波を対象物に向け発信し、その反射波を再度受信することにより、対象物の有無や対象物までの距離を検出するセンサです。超音波の発信から受信までに要した時間を計測することで距離を測定し、また、その反射の強さで物質の性質の違いなど対象物の構造がわかります。反射波を断面画像データとして得ることができるため、人体やモノの内部など、見えないものを、傷をつけずに可視化することが可能です。そのため、超音波センサは人体のさまざまな検査や、X線を照射できない妊婦の胎児検診などに広く利用されています。また、臓器をリアルタイムで観察できるため、検査のための組織を採取したり、臓器の位置を確認しながら治療を行ったりするときに使用されることもあります。
 近年の超音波診断においては、例えば立体的な画像描写により胎児の運動パターンを観察し、発育状況の分析が行われるなど、診断画像の3次元化は日々進歩しています。その立体画像構築の手法として、電子走査式リニアやコンベックス探触子などを機械的に扇状に揺動させ、3次元データを取得、画像化する方法があります。


2.メカニカル3Dプローブ(探触子)
 日本電波工業(株)(以下、NDK)(*)においては、1970年代より1500種類以上の探触子の開発・製造実績があります。なかでも、腹部用に「メカニカル3Dコンベックスプローブ」の開発を手掛けてきており、現在は複数の製品の量産化を行っております。このメカニカル3Dプローブの他の診断領域への応用展開/適用として、乳腺、甲状腺の診断またはリウマチ診断等をターゲットとした高周波の「メカニカル3Dリニアプローブ」の製品を展開しています。NDKでは扇状タイプのコンベックスとは異なり、リニア揺動方式とすることで被検体と接触する部分をフラットな形状としています。扇状とした場合では接触面は凸形状となり診断部位を押しつぶしてしまうことがありましたが、診断部位を押しつぶすことなく診断できる利点があります。また診断画像におきましても高周波であるため、方位分解能の改善向上が図れ、鮮明な画像を得ることができます。
 今回、このメカニカル3Dリニアプローブの概要について以下に説明します。
 

(*)NDKは、医療機器における品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO13485:2016」の認証を取得しており、医療機器に求められる安心・安全かつ高品質な製品を提供しています。


3.メカニカル3Dリニアプローブの構造
<メカニカル3Dリニアプローブの特徴>
 ワイドなフットプリントで、近距離から広い視野をみることが可能なメカニカル3Dリニアプローブは、図1のような外観形状をしており、内部には超音波を送受信するリニア型のセンサ部と、それを揺動させる駆動部分とを兼ね備えた構造をしています。

図1.メカニカル3Dリニアプローブの外観と主な仕様

図1.メカニカル3Dリニアプローブの外観と主な仕様


 リニア型のセンサを平行に移動させるためには、図2(内部構造)のようにセンサを取り付け、駆動用のモーターからの回転をベルトに伝えて、センサを平行に移動させることで可能としています。このセンサ部分は、被検体に接触させても平行に移動しながら超音波信号の送受信が行えるように、超音波の媒体となる液体を充填した構造になっています。この液体中においては、超音波の送受信の妨げになる異物や空気(気泡)を十分に取り除いた状態で密閉することが必要となります。液体は、周囲環境温度や気圧の上昇/下降によって、膨脹/収縮が発生します。この膨脹や収縮によって被検体と接触するフラットな部分が圧力変化の影響を受けて、わずかに変形してしまう問題がありました。
 

図2 メカニカル3Dリニアプローブの内部構造

図2 メカニカル3Dリニアプローブの内部構造


<内部圧力変化の問題解決策>
 一般的なプローブの構造においては、確実な接着とシーリングによって密閉された、内部と外部との間で絶縁された電気的に安全な状態の確保が必要となります。密閉された製品において、内部の液体の膨脹/収縮(体積変化)に対応し、かつ電気的な安全性を確保した通気手段を兼ね備えた構造としています。気体は通しますが液体を通さないシートを使用した通気孔を設けることで膨張/収縮による内部圧力の変化を緩和させることが可能となり、被検体と接するフラット部分を変形させることなく良好な超音波診断画像を得ることのできるプローブの提供が可能となりました。

図3 メカニカル3Dリニアプローブの内部構造(改善)

図3 メカニカル3Dリニアプローブの内部構造(改善)


4.代表特性例

代表特性例

代表例は周波数を8MHzとし、乳腺や甲状腺の診断用としています。
周波数においては診断部位や用途に応じて11MHzまでの対応が可能です。


5.今後の展開方針や課題
 メカニカル3Dタイプのプローブは、製品開発初期においては産婦人科向けの胎児の観察のみを目的とした製品でしたが、現在の用途としては多種多様化してきています。今後もお客様の用途に適した製品開発を行っていくとともに、既存製品の性能改善、小型・軽量化、低振動化などの改善を行い、高性能で使いやすい製品の提供を継続します。


6.注記
 今回紹介しました内容は、特許第5885296号 発明名称「超音波探触子」として、特許取得済みとなっております。  



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