NAPiCOSによる測定法

NAPiCOSによる測定法

NAPiCOSは、水晶振動子の質量付加効果を利用して、微量分子の質量を計測する技術を使用しております。
水晶振動子は厚み滑り振動で、その共振周波数を安定的に発振する特徴があります。その水晶振動子の電極に質量のある物質が付くと、その重量に対応した周波数低下が現れます。それを質量付加効果と呼びます。

質量と周波数の関係式

質量と周波数の関係式はSauerbreyの式があります。

1.Sauerbreyの式

Sauerbreyの式は均一で且つ堅い薄膜のようなアプリケーションにおいて、その質量と周波数の関係としてしばしば用いられます。例えば真空蒸着においてある程度の質量と薄膜厚みを計算する場合などです。Sauerbreyの式によると、弊社9MHzの水晶センサを使用した場合、周波数変移量1Hz当たりの質量換算は約1ng/cm2となります。

2.Kanazawa-Gordonの式

液相での化学反応による水晶振動子の質量付加効果の場合、質量と周波数の関係はKanazawa-Godonの式が一般的です。過度な粘性のある液体の場合、粘性により水晶振動子共振直列抵抗が大きくなるため、その粘性に付いて考慮したのが、Kanazawa-Godonの式です。

参考文献:K.Keiji Kanazawa and JOSEPH G.GORDON Ⅱ −Analytica Chmica Acta(1985)99-105

3.水晶振動子視点での式の位置付け

水晶振動子は前述に説明した以外にまだ非常に多くのファクターがあり、計測方法や環境などによって大きく影響されます。溶液中の免疫反応の厳密な質量と周波数の関係式は、まだ明らかとなっていません。その為、Sauerbreyの式、Kanazawa-Gordonの式、共に参考とされるのが良いでしょう。

計測法の注意点

NAPiCOSによる測定法は、従来のQCM法を進化させたもので、センサとなる水晶振動子の共振周波数を、発振回路や他の測定回路から得られる周波数の変化を基に、微小質量変化として捉える方法です。

はじめに、NAPiCOSの特徴の一つである周波数は、周波数安定度として1966年のIRE(現IEEE F.C.S)特別チームによる宣言により制定され、 IEEE Standard 1139-1999 に基づくことが必要です。この中には、1秒以下の短期安定度、及び、1秒を超える長期安定度に区分されています。我が国では、電気学会や電子情報通信学会の周波数関連部門では一般常識として受け入れられています。

またNAPiCOSは、技術的には電気計測の分野となります。周波数の測定精度は、測定確度としてIEC 規格を基に制定されたJIS C 1002及びJIS C 1005等で定義されています。もし、これを逸脱すると質量の絶対値の考察は困難となります。例えば、周波数カウンタは、1秒間に1Hzの桁まで表示します。周波数カウンタを1秒ゲートで9,000,000Hzを測定した場合、少なくとも9,000,000Hz ±1Hzの誤差が生じるため、 9,000,000Hz は保証されません。周波数の絶対値を保証する観点から、0.1Hzの桁まで周波数を測定しても、0.1Hzの桁まで発振周波数の短期安定度が保証されていない発振器では、9,000,000Hz は保証されません。従って、一般的に、9,000,000Hzで1Hzの周波数変化が生じた場合、質量変化は数ngと言われていますが、この確度は、9,000,000Hz ±0.1Hzの周波数測定確度が保証されねばならないことになります。従って、周波数計測確度が非常に重要です。

水晶片の側面やタンパクが形成された部位に溶液の回転力、溶液の渦、ガスや大気の流れなどがあると、水晶片が持つ応力感度と称する原理により、0.1Hz程度の周波数変化は容易に発生する可能性があります。

水晶振動子がセンサの本体となるため、水晶振動子の主材料となる水晶片の品質グレードはセンサ用として厳密に選定する必要があります。電極材料は、水晶片と相性の良い材料を厳密に選定する必要があります。水晶片は非対象性の結晶です。このため、軸方向や形状、寸法、電極の厚み、切断角度等、検出しようとするタンパクに適合した設計が必要になります。もし、これを踏襲しない場合は、測定値となる周波数が不安定になる、急激な周波数変動が生じる、再現性がない、等々の現象が生じます。

周波数低下量と反応量となる質量変化は、Sauerbreyの式が基本です。このSauerbreyの式には水晶片に与えられる溶液の粘性等が加味されていません。すなわち、水晶振動子の設計の観点では、十分に検討された式ではないことになります。また、この式は、水晶振動子が持つエネルギー閉じ込め効果の適用が十分ではありません。このため、得られた数値結果には十分に注意することが必要です。

更に、水晶センサをネットワークアナライザやインピーダンスアナライザに使用して周波数や共振抵抗を測定する方法が提案されています。この場合、高周波測定に特有なインピーダンスマッチング、水晶振動子面に粘性物質を形成させるために生じるQの低下による周波数 対 位相の変化速度の増加、等々、正確さに欠ける測定値が得られる場合が少なくありません。

弊社が提案しているNAPiCOSは、周波数の絶対値、周波数測定、水晶片の設計、及び、水晶振動子の設計の観点から、研究・開発された新たな計測システムであり、周波数の厳密さ、周波数測定の定義を厳密に適用した水晶センサ用水晶振動子を使用しております。

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